グローバル金融機関向けのF5 DDoSリファレンス アーキテクチャ

今回投稿したブログは、F5ネットワークスのテクノロジー・エバンジェリストであるDavid Holmesのブログ投稿「The F5 DDoS Reference Architecture - Global FSI Edition」を元に、日本向けに再構成したものです。以下は、David Holmesの個人的体験談に基づいています。

 皆さんは、ジョージ・クルーニー主演の「マイレージ、マイライフ(原題:Up in the Air)」という映画を観たことがあるでしょうか。1000万マイル(航空会社のマイレージ、しかも国内線だけで)達成を人生の目標にしていた男の物語です。この映画の中で主人公が「年間35万マイルも飛んでいるんだ」と語っていたことを思い出します。月までの距離が約20万マイルですから、彼はそこからさらに15万マイルも彼方へ、年間で移動していたことになります。私(David Holmes)はこの映画が大好きです。なぜなら私も同じような状況に置かれており、実は私もこの2年余りの間に、30万マイル近くを空の上で過ごしてきました。

空の上で書き上げた2段構成のアーキテクチャ

 私の旅のほとんどは、著名なグローバル金融機関への訪問であり、用件はDDoS攻撃に対する彼らのチャレンジに関するものです。この取り組みがもたらした大きな成果のひとつが「F5 DDoSリファレンス アーキテクチャ(F5 DDoS Reference Architecture)」です。このアーキテクチャは、ボリュメトリック型と非対称形の両方のDDoS攻撃を防御するために最適化された、分割型のネットワーク アーキテクチャです。すでにこのアーキテクチャを実現している金融機関もあれば、構築中の金融機関、あるいは早急に構築したいと希望している金融機関もあります。

 私はこのアーキテクチャに関するドキュメントを、すべて飛行機の中で書き上げ、新しい「F5 reference architecture site」に掲載しました。飛行機の中では、美人アテンダントに時折気を散らされる以外は、集中して物書きができるからです。

 

 

 

このアーキテクチャの本質として、DDoS攻撃に対する防御機能を2段構成にしている点が挙げられます。

第1段:ネットワーク防御

 第1段の防御は、ネットワーク ファイアウォールの近くに実装します。この防御機能は、SYNフラッドやICMPフラッドといった攻撃を緩和するよう設計されている他、アクセス回線の帯域使用率が80~90%になる程度のボリュメトリック攻撃にも対応します。多くの金融機関は独自のIPレピュテーション データベース(パケットを送ってきたソースIPアドレスが信用できるか否かを識別するためのデータベース)を構築しており、DDoS攻撃を受けた際にはその情報に基づいて、ソースIPアドレスからのパケットを制御します。

 このリファレンス アーキテクチャは、ネットワーク ファイアウォールがF5製品か否かを問わない内容になっています。しかしあえて言わせていただければ、F5製品ほどDDoS攻撃防御を強く意識したファイアウォールは、他に存在しません。

第2段:アプリケーション防御

 第2段は、CPU負荷の大きい防御メカニズムであり、アプリケーションを意識した上で展開すべきと、F5が提唱しているものです。この種のメカニズムとしては、ログイン ウォールやWebアプリケーション ファイアウォール ポリシー、F5 iRulesを活用したダイナミック セキュリティ コンテキストがあります。またSSLの終端も、この第2段に含まれます。第2段において、特定機能に特化した専用のIDS/IPSデバイスを採用した場合には、かなりのラックスペースが専有される可能性があります。

どこでSSLを終端させるべきか

 このリファレンス アーキテクチャを発表した後、「第2段ではなく第1段でSSLを終端させることは可能だろうか」という質問を複数の方々からいただきました。答えは「Yes」であり、私たちのお客様の中にもそのようなケースは存在します。しかしこれらのお客様はグローバルな金融機関ではありません。グローバルな金融機関はできる限り、彼らの暗号鍵を最前線のファイアウォールの後ろに隠そうとしています。彼らの資産はインターネットの中で最も高い価値を持つ攻撃ターゲットであり、SSLの暗号鍵はその最たるものだと言えるからです。

 このアーキテクチャに関する詳細は「F5 Synthesis reference architecture site」で解説しています。またこのサイトにはDDoS攻撃防御だけではなく、クラウド化やLTEローミング、サービス プロバイダー向けセキュリティなどの解説も掲載されています。

 このリファレンス アーキテクチャに対する反応はポジティブなものでした。お客様はぜひとも、技術的な詳細を知りたいと言ってくださったのです。飛行機の中での執筆作業は、ジョージ・クルーニーが過ごした時間よりも、間違いなく意義のあるものでした。ところで今ふと思い出したのですが、ジョージ・クルーニー主演映画の中で私が一番気に入っているのは「ラスト・ターゲット(原題:The American)」です。ぜひご覧になってください。このDDoSリファレンス アーキテクチャを読み終える間に、ネットからストリーミングできるはずですから。

Published Nov 04, 2015
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