企業アプリケーションでも進むクラウドへの移行
かつてアプリケーションは、単一のインフラストラクチャ上で集中的に管理されており、データセンター内では、外部ネットワークとの境界にいくつかのセキュリティ機能を配置することで保護されていました。IT部門の役割は、データセンター内で稼働するアプリケーションの可用性やパフォーマンス、セキュリティを確保することであり、アプリケーションのライフサイクル全てを管理することが可能でした。
しかし、このような、データセンターで全てが管理できるというような状況は、すでに過去のものだといえます。現在では、多くのアプリケーションにおいて、プライベートクラウドやパブリック クラウドへの移行が進んでいます。CIOは管理性と引き換えに、俊敏性とコスト削減を可能にするクラウドベースのモデルを選択しつつあります。
多くの業務アプリケーションは、すでにクラウドへと移行しており、SaaSの利用も広がっています。また、IaaSモデルを採用したモバイル アプリケーションの活用も拡大しています。このような多様な環境において、今日のIT部門は、アプリケーションの可用性やパフォーマンス、セキュリティを保証しなければならないのです。高いサービスレベルが求められるのは、ミッションクリティカルなアプリケーションだけではありません。例えば、消費者向けのアプリケーションでは、ダウンロード回数やエンゲージメント率が重視される傾向にありますが、これらにおいても、高い可用性とパフォーマンス、セキュリティが求められます。
このような状況に適切に対処するために、全てのアプリケーションには“アプリケーション中心の戦略”が必要と言われています。そして、この戦略を具現化するためには、アプリケーションが展開されている場所にかかわらず、適切なアプリケーションサービス(L4-L7サービス)が不可欠となります。
アプリケーション中心の戦略とは
それでは、アプリケーション中心の戦略とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。それは、アプリケーションの展開モデル(デプロイ方法や場所等)にかかわらず、全てのアプリケーションに一貫したサービス提供を保証する戦略です。
クラウドへの移行は、初期投資や運営コストの削減を可能にしますが、いわゆる“クラウドファースト戦略”だけでは十分ではありません。クラウドに移行してコストを削減できたとしても、パフォーマンスや可用性が低下してしまえば生産性は低下し、大きな損失を招く危険性があるからです。クラウドへの移行は、IT部門のビジネスモデルやネットワーク アーキテクチャ、アプリケーションの展開手法、ハードウェアやソフトウェアの選択など、企業ITにかかわる様々な側面を否応なく変化させています。しかし、アプリケーションが重要であるということは、依然として変わりません。「常に適切な状態でアプリケーションが利用できること」を最優先にする戦略が、アプリケーション中心の戦略なのです。
また、クラウド移行によって複雑化した環境においては、これまで培ってきたスキルやポリシーの継続的な利用を可能にすることも重要です。企業のIT部門にとって、これらは大切な資産だからです。さらに今後は、DevOpsによる継続的な開発・展開・運用の実現も求められます。アプリケーション中心の戦略は、このような要求にも応えなければなりません。
クラウド時代において、アプリケーション中心の戦略を適合させるためには、アプリケーション サービスも進化する必要があります。オンプレミス、クラウド、SaaSのいずれの環境においても、アプリケーションの可用性やパフォーマンス、セキュリティを保証できる仕組みが必要なのです。そして、これらを一貫して展開し、管理することも求められます。
アプリケーション中心の戦略を成功に導くには
F5はこのような要件に応えるとともに、クラウド時代におけるアプリケーション中心の戦略を成功に導くため、イノベーションを継続的に推進し、製品の拡張に取り組んできました。この取り組みの中核には、BIG-IPによる配信/セキュリティサービス機能と、BIG-IQが持つ管理/オーケストレーション機能の強化があります。取り組みの結果、F5は、アプリケーション中心の戦略をさらに強力にサポートする新機能を盛り込んだ、BIG-IP 12.0のリリースに至りました。
BIG-IP 12.0は、SSL Everywhere、拡張された不正防止機能、Office 365などブラウザを使用しない環境もサポートする最先端のSAML強化をはじめとしたSSO(シングル サインオン)の改善、ECC(楕円曲線暗号)やFS(フォワード セキュリティ)、Camelliaといった新たな暗号のサポートによるプライバシー保護とメッセージ改ざん防止の強化など、アプリケーション セキュリティのための最新の手段を提供しています。また、キャッシュ拡張、HTTP/2への対応、そしてハイパースケールなDNSによって、コストのかかるアプリケーション改修を行うことなく、多様な環境におけるパフォーマンス向上も可能にしています。
オンプレミスやプライベート クラウド、パブリック クラウド、さらにはSDNにも対応するため、F5はBIG-IQとBIG-IPによるオーケストレーションと管理機能の拡張も継続しています。これまでにも、F5は、Cisco ACI、VMware NSX、OpenStack、VMware vCloud Air、Amazon Web Servicesをカバーしたエコシステムを作り上げてきましたが、今回さらにMicrosoft Azureが加わりました。また、クラウドやDevOpsへの取り組みを支えるため、仮想化された軽量の負荷分散ソフトウェアであるLineRate Pointを含めた幅広いソフトウェアもすでに提供していますが、これらを補完する拡張されたプログラミング ツールも新たに提供しています。DevOpsのプロセスを自動化していくためには、APIとデータ パス スクリプトが必要になりますが、この要求に対応するためF5は、iRulesエディターと拡張されたiControl APIの提供も開始しています。
ここでは紹介しきれませんでしたが、F5は製品の改善と強化、機能の追加を積極的に進めています。これらの取り組みを通じてF5は、企業のIT部門がアプリケーション中心の戦略に基づき、アプリケーションの開発から展開、運用に至るまでを、クラウドへと拡大し続けることを支援します。